開業するのにコンサルタントは必要か?

はじめまして 静岡県袋井市で内科・小児科・皮膚科のクリニックをしている溝口哲弘と申します。2013年10月に開院して早いもので8年の月日が流れました。現在、日経メディカルでクリニックマネジメント実践記というコラムを連載し、クリニックマネジメント協会(CMA)という開業医が臨床と経営を学ぶ勉強会を主宰しています。その中で当院で開業研修をしたりするなかで、開業予定の先生方からコンサルタントに関する相談が良くありますので、お答えしていこうと思います。

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開業支援コンサルタントの種類

医薬品卸 機械卸 税理士 調剤薬局 建築会社 医院経営支援コンサルタント 独立系コンサルタント が存在します。

比較的多くの開業医が利用するのが、卸のコンサルタントです。
勤務医時代に卸の人達と接触機会はまずないと思いますが、例えば武田薬品の薬を購入するのに、武田薬品から直接購入するのでは無く、医薬品卸会社が存在します。日本国内の大手としては、アルフレッサ・スズケン・メディセオ・東邦薬品などがあり、他に地域の中小の卸会社があります。静岡県西部地区ではアルフレッサ・スズケン・メディセオの他に中北薬品があり、それぞれに開業の支援をしています。医薬品卸にとって、開業支援をすることは医療機器を購入してもらうだけではなく、開業後に医薬品を購入してもらう事で取引につながることになります。

医療機器メーカー 病院などにある医療機器を取り扱っている企業 日本光電 GE 日立・・・などの営業の人がサービスとして片手間でやっているもの。中には良心的にしていることもあるでしょうけれど、本業ではないので あまり過度な期待をすることは酷です。

税理士 開業後の顧問契約をすることが前提であり、銀行などに提出する事業計画書などを作成してくれます。

調剤薬局 門前薬局をすることを前提としてものです。昨今は調剤報酬も低下してきているため、極力 1クリニックだけではなく医療モールを推奨してくるところが多いでしょう。中には、モールさえ埋まれば良いという考えて、 近隣の競合クリニックと同一診療科の先生を誘致してくることもあり、調剤薬局であれば、どこの門前を展開をしているか確認をして、近距離競合診療科の門前薬局をしていないかということを確認しておいた方が無難でしょう。

建築会社 建築をしてくれることが前提としたものです。開業費用の中で一番高額なのが建築であり、相見積もりが出来なくなるという点には留意が必要です。

医院経営支援コンサルタント 船井総合研究所など中小企業の経営支援をしている所のコンサルタント部門や医療専門の経営支援をしている所などがあります。

独立系コンサルタント 比較的良くあるのが建築などで開業支援をしたことがある人が独立する方法 開業前を専門としていることが多く、開業したら後は知らない ということもあります。

コンサルタントを選ぶチェックポイント

こんなコンサルタントには要注意

他のコンサルタントとの接触は控える様に連呼する

開業情報が流れるという話がありますが、実際には1人のコンサルタントに接触した時点で 地域の様々な業者で情報が共有をされており、全く話をしたことのない先生のことでさえ、地域の開業医である私の所まで話が届きます。
そう言った中でなぜ他のコンサルタントとの接触を控えさせるのでしょうか?

その理由を考えてみましょう。
専業コンサルタントと言いながら、取り扱い件数が年数件
コンサルタント料が200万程度
こう言った所は注意が必要です。
200万という金額を考えたときに、非常に高額だと思われるでしょう。実際の業務量に対しては高額ではありますが、一企業としてそれだけで経営は成り立ちません。

※費用の目安は1時間1-2万円
コンサルタントに対する対価は仲介料がなければ1時間1-2万円になります。
医療系コンサルタント会社 最大手の船井総研の社員の年収は698万円 週160時間×12ヶ月で 1時間当たりの単価は7千円
一般的に給与の3倍を稼ぐ必要がある(雇用側は給与の他に社会保険料 家賃・・・様々な費用が必要なため)とされており、3倍とすると1時間2万円 月の顧問料が15万と仮定するとで1カ所当たり7.5時間位になります。

個人コンサルタントであれば、売上の中から家賃・宣伝広告費・税金など様々な費用が必要になり、200万と仮定した場合に最低でも毎年10カ所以上の取り扱いが必要で、それ以下の場合は何らかの収益を上げる必要があります。

※コンサルタントの収益構造を理解する
コンサルタント料×契約数+業者からの紹介料(3-15%)になります。
このため、各社が開業コンサルタントに進出する大きな理由はコンサルタント料では無く、紹介料が主な収益源になります。開業コンサルタントの仲介などに伴う収益は1件あたりビル診で500万 戸建て診療所で1000-2000万程度が相場ともされます。

そのため、仲介料を主たる収入源にしているところは、他のコンサルタントを避けるように必ず念を押してきます。

実は危ないコンサルタント

開業後患者さんが来ないから苦労すると連呼する

医療機器の営業職であれば、気持ちを持ち上げて、多数の患者さんが来るでしょう 先生のレベルならと言って、患者サービスとしてほとんど使わない医療機器を追加購入させたり、より高規格のものを推奨してきたりすることもあります。
こう言ったものの逆で、患者さんが来ないこともあると忠告するコンサルタントにも実は注意をする必要があります。クリニックも需要の無いところ、存在を知られない所であれば患者さんが受診する理由はありません。
本業のコンサルタントであれば、患者さんが実際に来るのかは周囲の環境・医師の経歴・キャラクターなどから簡単に予測することが可能です。注意しないといけないのが、開業前のみのコンサルタントで、開業後に付き合いが無くなるところです。気を引き締めさせる様に言っているのでは無く、患者さんが受診してもらう方法を知らない、というかそんなことには興味は無く、開業させることが目的なので、あとはどうでもよいと言う証左でもあります。
ただ、コロナ流行に伴い新規開業の際に患者さんの立ち上がりが以前と比較して苦労しているところが増えているのは事実ではあります。また、全国的な統計上は外来受療率が2025年にピークアウトするとされており、何もなくても外来に受診される総数も2025年以後は減少に転じることになっています。

院内処方が大変だと連呼して、院外処方へ誘導する

コンサルタントの収入源を考えたときに、調剤薬局からのリベートを考えると 院内処方にされると収益源が減ることになります。もしくは、薬局からリベートを受け取らないとしても、薬局の建築費分がなくなってしまうため、薬局がセットで無ければ困るのです。院内処方は多少の手間はかかりますが、実際に運用してみるとそれほど困ることは無く、院内にない薬や一包化を希望される場合は院外処方を選択すればいいだけのことです。昨今は大規模なドラックストアに調剤薬局機能が普通にくっついているので、そこに買い物ついでによってもらうということも1つの提示案になります。

やってはイケないこと

経営者でないものに経営の相談をする

卸の営業マンなどにクリニックの経営相談をすることはナンセンスです。初めての経験で分からないだらけだとは思いますが、あなたは看護師さんに病気の相談をするでしょうか? 多少のことは知ってはいるでしょうけれど、今まで患者さんから困った事に、状況も知らない知り合いの看護師がどうこう言っていたということは皆さん経験はありますよね。

採用面接に社労士などを同席させる

年間数百から数千の採用を扱う 大手企業の人事部長でさえ、採用面接で人を見抜くのは難しいとされます。社労士は労務トラブルを発生させないための諸制度の整備やトラブルになった時に対応を依頼する対象であり、採用のプロであることはほとんどありません。スタッフが30人以上社労士事務所であれば話は変わってきますが、ほとんどの事務所が数人の構成です。業種を問わず、実際に人を多数雇用し、採用面接の結果がどうであったか、改善点が何があるかということを理解してもらう人にアドバイスをもらうのが一番良いです。

コンサルタントに頼む前にしておいた方が良いこと

コロナの影響で一般の方々の思考にも影響があり、クリニックで患者さんの導線や時間分離をしていれば、風邪症状の人達と待合室で一緒になることは少ないのですが、それでも受診行動に変化が出てきています。
2020年4月以降で開業された先生方を支援しているコンサルタントは、軒並み以前の立ち上がりが悪くなっているという話をしています。
その為、医療機器・建築に関して費用を抑えることを考える必要性があります。
医療機器は定価1000万 販売価格300万など訳の分からない定価設定がされています。これは、元々 定価で予算請求をしておいて、納入価格との差を他の部門などに使う、金融機関からお金を借りる時の書類として使うためにあったものらしいですが、一般の開業医にとっては、実勢価格のみが重要なポイントになります。
さて、費用を下げるために、具体的には、医療機器に関して中古品も検討することです。
使用頻度が少なく、診療報酬が少ない物に関しては、積極的に検討する必要があります。例えば、ABI/PWVですが、新品であれば120万位の費用がかかります。これに対して、診療点数は100点(1000円)です。検査に時間もかかるため、人件費などを含めて考えれば、1回当たりの収益は600円程度 利益を上げるには2000回以上の検査をする必要があります。これが中古であれば15万程度で入手可能です。これであれば、250回程度ですみ、必要な人には検査をするということが可能になります。
医療機器によっては中古の値下がりがほとんどないもの、CTの様に管球の交換費用が高額になるものなど、実際に見積りを取ってみると分かると思います。
また、高額の医療機器は自分で相見積もりをとることも大切です。一度 コンサルタントなどを経由すると紹介料込みの見積りが出てくるだけになります。
どの業界でもリベートは存在し、年間○台 発注するとキックバックするなどの契約もしているそうなので、自分で見積りをとったあとに、医薬品卸経由で購入してあげることも1つの手段にはなります。
また、コンサルタントを入れていない知り合いの開業医に納入金額を聞いておくはとても大切です。

建築関連はコンサルタントの紹介は入れない

クリニック建築に関しては、設計・施工分離ということが推奨されています。設計士と建築会社を分けることによって、監視する人を増やすこと、
我々も患者さんを紹介しあうのと同じで、どこの業界も談合・情報交換は常にあるものだと考えておくと良いでしょう。それでも 他社との比較はそのため、設計・施工分離と言って、クリニック建築の際に 設計士を入れること と 建築費を立てます

院外処方の悲劇

調剤薬局も色々あります。良いところ、悪いところ様々です。
院外処方の問題点は、経営が傾いたとき、年齢と共に受診患者さんの数が減ったときに容易に撤退されてしまうかもしれないという点です。
友人のクリニックでは開院前に担当になると言われた薬剤師を派遣してくれず、非常に問題のある方が担当、診療時間などにも口を出してくるとのことで、薬局のために働き、鵜飼の鵜の様だと愚痴を言っていたり。
よりよい関係性が築ける調剤薬局を探しましょう。
薬局経営者の本心は、日経のコラムを読んでみるとうかがい知ることが出来ます。
薬局経営者奮戦記~社長はつらいよ
ケンカしてはいけない相手とのケンカ
不採算店はやめちゃう?
院長の“浮気”
薬局にとって“最悪”な組み合わせ
熊谷信の「薬剤師的にどうでしょう」
日医の会長交代は薬剤師的にどうでしょう

コンサルタントの使い方

時間をお金で買うということ
相手側にも収益が上がることを考える
企業活動としている以上、相手側にある程度の収益が上がらなければ、
継続的な付き合いが出来るところかどうか
→開業前コンサルタントであれば、開業して数年した開業医の先生の所に行って、もう一度開業をするとして、そこを使うかどうか と言う質問してみてください。それでもう一度使うというのであれば、紹介してもらうのも1つでしょう。

僕は 開院前にお世話になったのは、主に医薬品卸・会計事務所の開業支援でした。独立系の開業支援にも一度依頼はしてみましたが、色々とトラブルがあり、開院が1年程遅れたこともあり、依頼をやめました。後で 先輩に聞いたところいわくつきのところであり、見た目的な実績は多数あるものの、あそこはやめておいた方がよいから、良かったねと言われました。

開業に関しては、コンサルタントなしで開業するのも一つではありますが、個人的には医薬品卸の開業支援を使って、スタッフ研修や医療機器のデモなどの日程を組んでもらうと、スケジュール管理などもしやすいと考えます。

開業後にも様々なコンサルタントにはお世話になっています。中には こんなんで良く仕事が成り立っているなと思うところもあります。依頼していて、こちらがどの分野でどのようなことを期待するのか と言うことをすり合わせを行うこと、工程表をしっかりと出してくれるか どうかということも大切な要素の一つでしょう。

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当院で研修後に開業された先生方

するがこどもクリニック: https://srgkc17.com/
あまが台ファミリークリニック: https://amagadai-fc.com/
柳澤総合内科医院: https://yanagisawa.clinic/